サステナビリティ

新製品・新技術の創出

当社は1951年に理化学研究所で取り組んでいた塩ビ樹脂の加工技術を事業化する目的でコンパウンド事業を始めました。創業当時は9インチロールの小さな設備で月産3~4tのまさにベンチャー企業としてスタートしました。配合技術を得た後、さらに付加価値を高めるために川下の事業に向かいました。培われた技術によって、硬質系はカレンダーフィルム、軟質系は食品包装用ラップ事業に進出し当社の主力事業となりました。また、1990年代後半にダイオキシン問題による塩ビバッシングを「挑戦機会」と捉え、軟質塩ビ代替としてエラストマーコンパウンドが事業として成長しました。
当社の基盤技術は「処方設計技術」「配合・混練技術」「フィルム製膜・加工技術」の3つの技術です。もう一度基本に立ち返り、もの造りに徹していくことが重要と考え、技術本部方針として「基盤技術を強化しイノベーションを創出する」を掲げて取り組んでいきます。

指標・目標

指標 範囲 単位 2021年度 2022年度 2023年度 中長期目標
2024年度 2030年度
研究開発費 連結 億円 15 16 18 - -
特許出願数 単体 8 8 19 (累計)45
(2022~2024年度)
(累計)210
(2022~2030年度)
外部機関との協業件数 単体 3 4 9 (累計)10
(2022~2024年度)
(累計)35
(2022~2030年度)

製品開発における方針

脱炭素社会へ移行するために市場が大きく変化していくことが想定されます。プラスチックを取り巻く環境が大きな変革を求められている中、当社は2019年にバイオマスプラスチックRIKEBIO®を、2022年には天然素材(茶殻、もみ殻、貝殻など)を練り込んだNatural RIKEBIO®を新たなシリーズとして開発しており、お客様と共同で用途開発などを進め、実績も出ています。
また、合成ゴムに比べ省エネルギー素材であり、CO2排出量を圧倒的に削減できるTPE(熱可塑性エラストマー)を合成ゴム代替として普及させることが、RIKEBIO®の拡販とともにこれからの当社の課題です。この環境問題は当社にとって単なる制約条件だけでなく、攻めに転じることができる挑戦機会にもなります。いくら素材が環境に良くても、選ばれなければ環境負荷を抑えることはできません。多くの人に選ばれるために、お客様にとって有用で手が届くものを意識して開発を進めています。

研究開発体制

2020年から研究拠点である研究開発センターの環境整備などハード面の充実を図ってきました。コンパウンド、フィルム技術の更なる深化のため、研究開発センター(東京)1号館/2号館/3号館の本格運用を目指して3号館のリフォームを実施しました。3号館にフィルム試作機を導入し、開発したコンパウンドをフィルム、シートにしてサンプルワークができる体制を作りました。
2023年度には2号館にゴム代替TPV(動的架橋型熱可塑性エラストマー)コンパウンド開発のための混練機を含めた新しいTPV生産のためのパイロットラインを完成させ、ゴムのTPV化を目指していきます。また、開発したゴム代替コンパウンドをゴムシート代替として上市していきたいと考えています。このパイロットラインを活用し、生産技術の更なる向上と将来の実機導入に向けた研究を進めていきます。

リケンテクノスグループの技術

処方設計技術

製品のライフサイクルはますます短くなり、かつお客様の要求はますます多様化し、複雑なものになっています。製品の開発スピードをさらに加速し、データ駆動型の研究開発による処方設計の効率化・高速化を図る目的でMI(マテリアルズ・インフォマティクス)の導入、運用を開始しました。今後は、整備したハード面を使いこなすために、ソフト面の充実を図っていきます。

配合・混練技術

複数素材のモルフォロジー制御、反応改質技術により、ますます広がる高機能材料へのニーズに対応します。お客様での加工適性を高めるため、最適な混練状態にてコンパウンドを提供しています。また、当社が長年培ってきた技術を活かし、最適な成形加工条件やお客様での成形不具合の改善提案をしています。これらの生産加工技術は、世界の生産拠点でも継承されています。

フィルム製膜・加工技術

当社の熱可塑性樹脂での製膜技術は、世界でも通用する技術力を有しており、フィルム表面の均質性や品質安定性は非常に優れています。また、多様なラミネート加工技術により、特性の違うフィルムをラミネートすることができます。フィルムの表面改質のためコーティング加工も行っており、汎用レベルから精密塗工までの塗工技術を保有しています。これらのフィルム製膜、ラミネート、塗工技術の総合的追求により、付加価値の高い機能性フィルムを提供しています。

品質管理技術

適正な品質を常に維持するため、たゆまぬ取り組みを続けています。原材料の化学物質管理に始まり、お客様のご要望に即した品質検査体制を整えています。また、製品の外観確認、各種物性検査を行い、適正な品質が維持されるよう各工程での厳格な管理を行っています。

分析技術

高度な構造解析技術は、製品開発には欠かせない技術のひとつです。最先端の分析設備を備え、材料の解析や、改良のための調査を行っています。

取り組み

外部との連携

オープンイノベーションの一環として研究機関との共同研究を進めています。例えば、東京大学との取り組みでは次世代半導体素材として注目されているグラフェンの積層方法についての共同研究をスタートしました。

知的財産戦略

昨今の社会変化に対応していくためには、経営戦略に知的財産の観点を活かしていくことが不可欠です。当社が長年蓄積してきた無形資産を棚卸し、可視化することで知的財産を利用しやすい環境の整備を進め、戦略的に活用していくための施策を進めています。