研究開発

トピックス

リケンテクノスの研究開発のトピックスや実績についてご紹介します。

架橋ゴム・加硫ゴム代替TPVのセミコマーシャルプラントを稼働開始(2023/12/13)

令和3年度におけるゴムくずの最終処分率は18.5%で、産業廃棄物の中では最終処分率が燃え殻に次ぎ2番目に高い品目(※)となっています。資源やエネルギーの持続可能性を重視したサーキュラーエコノミーの取り組みを拡大していく観点からも各種機能性ゴムの性能を担保し、リサイクル性に優れるTPV(動的架橋型熱可塑性エラストマー)が架橋ゴム・加硫ゴムの代替素材として期待されています。

出典:環境省 令和4年度事業産業廃棄物排出・処理状況調査報告書(令和3年度速報値)

研究開発センター(東京)では、架橋ゴム・加硫ゴム代替TPVコンパウンド開発のためのTPV生産セミコマーシャルプラント(SCP)の稼働を開始しました。このSCPは年間100トンの小規模ラインで、スケールアップ試験、顧客要求に応じたサンプリングと検証、小規模生産に適していることから、顧客の特別なニーズを満たし、フルスケールのプラントのボリュームを必要としないハイエンド製品の開発促進に有効です。当社では、このSCPを用いてTPVコンパウンドの開発・検証を進めており、開発したコンパウンドは自動車用成形部材や建材用途向けに上市していく予定です。また、TPVコンパウンドをシート化し、ゴム代替シートとして展開していくことも検討しています。

リサイクル硬質ポリ塩化ビニル用改質材を開発(2023/11/30)

硬質塩ビは、剛性、耐薬品性、耐久性が高いという特長があり、建材をはじめ様々な部材に使用されています。このような優れた性能を有する一方、一度成形加工したものを粉砕し再利用する際には、熱安定性不足、溶融不足等が発生し、成形品の外観荒れや物性低下を引き起こす場合があり、リサイクルを進める上で課題が残っています。

当社では、そのような課題に着目し、コンパウンド配合技術の知見を活かして硬質塩ビのリサイクル材使用時に添加する改質材の開発を試みました。リサイクル材に当該開発品を添加することで、押出負荷を低減し、安定した外観及び寸法の成形品作成が可能となります。品種としましては、用途に応じて押出負荷低減、成形安定性、衝撃強度向上などの複数グレードを取り揃えています。

【開発品の特長】

  • 成形時の押出負荷を低減する
  • 成形品の外観向上、寸法安定化が見込める
  • 衝撃強度を向上させるグレードも取り揃えている

早稲田大学と塩素含有プラスチックの有効利用の共同研究を開始(2023/6/29)

近年資源循環の観点から廃プラスチックのリサイクル法の開発が活発に進められています。分解反応等を伴うケミカルリサイクル法については、基本的にはプラスチックを化学原料にまで戻すため、種々の製品に再転換が可能で応用範囲も広くなります。現在リサイクル法の開発対象となっているプラスチックはポリエステルやポリオレフィンが主流となっています。一部ではパイロットプラントでの実証実験も進められており、早期の実用化が期待されています。
しかしながら、PVCはポリマー骨格中に塩素を含有しており、分解反応時に生成する塩素含有化合物の取り扱いや、炭素を主成分とする残渣骨格の複雑さから、上記プラスチックに比べてリサイクル技術の難易度が高いとされています。またPVCは可塑剤、安定剤、充填剤等の添加剤と共に溶融混練されたPVCコンパウンドが成形品原材料となる場合も多く、分解反応に対してのこれら添加剤の影響も不明な点が多く存在します。そのため、PVCのリサイクルでは直接塩化ビニルモノマーに戻すのではなく、PVCを出発原料として他の有用な化合物に転換する手法の開発に取り組んだ事例もありますが、殆どが実証実験の段階に留まっています。

このようにPVCのケミカルリサイクル技術の確立が難しいとされることから、当社は廃PVCを有効的に活用するために早稲田大学の所千晴教授の研究グループと共同で塩素含有プラスチックを用いた廃金属化合物からの有用金属回収技術の開発に着手します。廃金属化合物は酸化物の混合物となっている場合が多く、これらを金属塩化物に変換することにより蒸気圧の差から有用金属類の分別回収が可能となります。この技術において塩化物に変換する際の塩素源としては一般的には塩化カルシウム等が使用されますが、代替としてPVCに代表されるような塩素含有プラスチックを用いることで、これらの有効利用につながることが期待できます。

早稲田大学と塩素含有プラスチックの有効利用の共同研究を開始(2023/6/29)

一般に使用されているPVC製品の多くは上述のように、PVC以外の様々な添加剤を含んでいることから、これらの添加剤の影響が塩化物への反応や金属回収プロセスに及ぼす影響を考慮する必要があります。この度開始した共同研究では、当社が世の中で実際に使用されているPVC製品のモデルとなるようなPVCコンパウンドを作成し、それらを用いて早稲田大学にて金属塩化物への転換反応の最適化を検討します。

PVCフィルムを用いた二次元物質の新規加工方法を東京大学との共同研究により開発(2023/2/28)

二次元物質とは、グラフェンや遷移金属ダイカルコゲナイド等のように原子1個分という極めて薄いシート状の構造をしており、剥片材料として従来の材料とは異なる特性を示すことが明らかになっています。特に、グラフェンは、シリコンの100倍程度ともいわれる電子伝導性、熱伝導性を有し、ダイヤモンド並みの強度と柔軟性を併せ持つことから、次世代の超高速電子デバイスや高感度センサー、省電力トランジスタ等の分野で産業利用に向けた研究開発が活発に行われています。

一方で、この材料自体は極めて小さく薄いために取り扱いが難しく、グラフェン片を持ち上げて目的の場所まで移動させる、シート片同士を重ねるといった加工は成功率が低いため研究の加速、実用化の課題となっていました。

PVCフィルムを用いた二次元物質の新規加工方法を東京大学との共同研究により開発(2023/2/28)

グラフェン片を加工するための工程として様々な素材を検討していた大学研究室より、当社製品「リケンラップ」を用いると加工の成功率が高くなる傾向があるという相談をきっかけに、理由解明と加工方法確立の共同研究を開始しました。当社の基盤技術であるPVC配合加工技術と製膜加工技術を用いてフィルムの処方検討・検証を行いつつ、グラフェン片の剥離挙動を解析した結果、加工時の温度条件等を調整することにより、容易にグラフェン片を取り扱えることが確認できました。

また、この加工方法を応用して二種類のPVCフィルムを組み合わせることにより、グラフェンや六方晶窒化ホウ素などの二次元物質を複数枚積層した複合原子層を容易に表裏反転することも可能となりました。このような反転させる加工方法は従来の手法では難しく、様々な積層組み合わせの実現や次世代の半導体デバイス、スイッチング回路の加工開発において重要な技術といえます。なお、上記研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されています[Scientific Reports volume 12, Article number: 21963 (2022) ]。

バイオマスプラスチック製品「RIKEBIO®」に新シリーズを追加(2022/12/7)

バイオマスプラスチック製品 RIKEBIO®(リケビオ)に新たなシリーズ「Natural RIKEBIO®」が加わりました。「Natural RIKEBIO®」は、本来廃棄される天然資源を当社の独⾃の配合加⼯技術によってコンパウンド化し、成形加⼯材料として有効活⽤することで廃棄物の削減を⽬指しています。ポリプロピレン(PP)をベースに天然資源を最⼤60%まで含有させることができ、⽯油由来のプラスチックの含有率を下げ『減プラスチック』、『脱プラスチック』への貢献が期待できます。

バイオマスプラスチック製品「RIKEBIO®」に新シリーズを追加(2022/12/7)

廃棄される天然資源には間伐材などの林産資源や茶殻・もみ殻などの農産資源、⾙殻などの⽔産資源があり、地産地消で調達できる場合も多いことからコンパクトな輸送網を構築でき、環境負荷の低減にもつながります。

当社では、これら資源の添加量をお客様のご要望に応じてカスタマイズすることが可能であり、⾵合い・⾊合いを調整することができます。
PPの他に塩化ビニル樹脂(PVC)や熱可塑性エラストマー(TPE)への添加も可能であり、天然資源が本来持つ特徴を残しつつ⽤途に応じて新たな価値を付与し、お客様の廃棄物削減へのソリューションを提供いたします。なお、Natural RIKEBIO®コンパウンドは成形加⼯材料として射出成形・押出成形に適しており、成膜技術を応⽤したシート化の検討も進めております。

【RIKEBIO®について】

バイオマス由来の可塑剤やフィラー(充填剤)を添加することによりコンパウンドとしてのバイオマス度を⾼めています。PVC系、TPE系でラインナップを揃えており、⼀部のグレードではバイオマスマーク(※)を取得しています。お客様のご要望に応じてバイオマス度を調整し、バイオマスマークを取得できるグレードの開発も可能です。
⽯油由来の従来製品と性能に遜⾊なく、幅広い⽤途に展開可能なため、サステナブルでプラクティカル(実⽤的)な製品です。⽇⽤品、産業資材⽤ホースに採⽤されるなど実績を重ねてきています。コンパウンド製品に留まらず、バイオマスフィルム、バイオマスラップの開発も進めています。

RIKEBIO

「バイオマスマーク」とは、⽣物由来の資源(バイオマス)を利活⽤し、品質および安全性が関連法規、基準、規格などに合致している環境商品の⽬印で、⼀般社団法⼈⽇本有機資源協会が認定しています(⼀般社団法⼈⽇本有機資源協会ウェブサイトより引⽤)。

環境対応型のACS樹脂を新たに開発(2022/11/16)

当社グループは、産業・インフラ分野において、発電・送電設備に付随した製品の材料供給を担っています。
ACS樹脂は、ABS樹脂に類したアクリル系(A)、塩素系(C)、スチレン系(S)ポリマーを主成分とした、成形性に優れる材料です。また、⼀般的な硬質系難燃樹脂は耐候劣化が著しいことが知られていますが、ACS樹脂は難燃樹脂の中でも優れた耐候性を有しており、⽩系⾊調でも使⽤できるほか、電気特性も優れています。難燃かつ⾼耐候な硬質樹脂であることから、住宅や⼯業⽤メーター取り付け盤、スマートメーター筐体、⽕災報知機など多くの実績を積み上げてきました。

優れた特性を持つACS樹脂ですが、⼀⽅で添加剤の⼀部に有機錫化合物を使⽤しています。有機錫化合物を含んだプラスチック製品においては世界各国で様々な法規制の対象となっており、ACS樹脂は各社のグリーン調達基準に適合しないことがありました。
そのような背景から、当社ではACS樹脂の優れた性能は保持したまま錫フリー化を実現し、環境対応型ACS樹脂を開発しました。今後は電材業界をはじめ、幅広い業界への展開を視野に⼊れたサンプルワークを進めていきます。

環境対応型のACS樹脂を新たに開発(2022/11/16)

バイオマスプラスチック製品「RIKEBIO®(リケビオ)」を上市(2022/6/13)

独自の配合加工技術で生み出される当社グループのプラスチック製品は、創業以来、多くの産業を支え、豊かさ、安心、快適さを提供し続けています。同時に、化学メーカーの責任としてサステナブルな社会の実現に貢献すべく、再生可能資源であるバイオマス材料を使用した製品開発を進めています。
2019年より同製品のサンプルワークを開始し、この度「RIKEBIO®」ブランドとして上市しました。

RIKEBIO

1. 軟質PVC系RIKEBIO®コンパウンド

主原料であるPVC樹脂の57%は天然素材の『塩』に由来し、ほぼ石油で構成されているポリエチレンやポリプロピレンなど他の樹脂と比較して原料の石油由来の比率が低いという特徴があります。
それに加えて、バイオマス由来の可塑剤やフィラー(充填剤)を添加することによりコンパウンドとしてのバイオマス度を高めており、RIKEBIO®「RB-VE70C1」にてバイオマス度40%のバイオマスマーク(※)を取得しました。汎用的な軟質PVCコンパウンドと同等の品質と性能を発現します。

2. TPE系RIKEBIO®コンパウンド

バイオマス割合10%~30%まで取り揃えており、幅広い硬さ領域に展開が可能です。軟質PVC系と同様に、一般的なTPEコンパウンドと同等の品質と性能を発現します。バイオマス材料を一部使用し、TPEが有する優れたリサイクル性も維持しているため、廃棄物の削減に貢献します。

軟質PVC系、TPE系RIKEBIO®コンパウンド、どちらも多品種をラインナップしており、自動車部材、日用生活品、建築内装材、土木部材など、幅広い分野でご検討いただけます。

TPE系RIKEBIO®コンパウンド

また、RIKEBIO®コンパウンドの技術を活かし、バイオマスフィルムの開発も進めています。

3. 半硬質PVC系RIKEBIO®フィルム

建装材内外装、ラベル、ステッカー、自動車用など幅広くご利用頂いている半硬質タイプで基材フィルムの部分をバイオマス化しています。既存製品に求められる各種性能を維持したままバイオマス割合10~20%の環境対応型製品としてご提案が可能です。

4.PE系RIKEBIO®フィルム

バイオマス割合20~40%のPE系バイオマスオレフィンフィルムです。リケンテクノスグループの強みである配合加工技術を生かし、薄肉高隠蔽で高い印刷特性を有した製品もご提案が可能です。

PE系RIKEBIO®フィルム

幅広い用途に展開可能な「RIKEBIO®」はサステナブルでプラクティカル(実用的)な製品です。RIKEBIO®コンパウンド、RIKEBIO®フィルムは、要望に応じてバイオマスマークの取得も可能です。

「バイオマスマーク」とは、生物由来の資源(バイオマス)を利活用し、品質および安全性が関連法規、基準、規格などに合致している環境商品の目印で、一般社団法人日本有機資源協会が認定しています(一般社団法人日本有機資源協会ウェブサイトより引用)。